芸術館日記

 8月21日に開幕した芸術祭、愛知トリエンナーレに行ってきました。特急「しなの」で二時間で行ける名古屋は、思いのほか近いということを実感しましたね。
 個人的には、東京から関西方面にでかけるとき、イメージ的にはずいぶん名古屋は関西よりで、静岡の向こうにあるのが不思議だったんです。もっと東京と大阪の真ん中あたりなのかと思っていたんですよ。はい、ばかですね(笑)。


 目的は、世界初演のロボット演劇「森の奥」を観ることでした。人間の俳優さん(←なんかへんな表現ですね、俳優さんは本来人間のはずです)とロボットが共演するんです。


 劇作家・平田オリザさんと、世界的なロボット研究で知られる大阪大学の石黒浩研究室のコラボレーションです。ロボットがどのレベルで、演劇に参加しているのか、ロボットはどこまで役者になれるのかに興味があったのです。が、見事というか、とっても面白い作品に仕上がっていました。


 物語は、2030年の未来、中央アフリカ・コンゴに生息する類人猿「ボノボ」を飼育する研究室で、サルと人間の違いを研究するロボットと人間たちを描いたものです。そこに自閉症の息子をもつ女性研究者が、その研究材料として、自閉症のボノボを作り出したいという希望をもってやってきます。会話を通して「サル/人間/ロボット」のあやうい境界線が浮かび上がるというもの。実験に使う側使われる側、人間は何をもって人間なのか、ロボットは人間になりうるか、いろんな疑問が提示されてきました。


 2030年の設定ですから、もうロボットと人間はまるで友人であるかのように会話をします。最初は観客に対してどこかペット的な存在から始まって、中盤は研究の同志であることが如実になり、またラストには愛らしい共感の対象になるのです。




 平田さんによれば、今回の演劇は「ロボットがここまでできるかという能力をねつ造している行為」でもあるのだとか。世界屈指のロボット研究で知られる大阪大学だからこそ、過剰にロボットが表現力をもったかのように見せることに問題がないか気を使ったそう。


 まつもと市民芸術館では晩春に「ロボット」という単語が生まれることになった「RUR」という作品を手がけたカレル・チャペックの「白い病気」を上演しました。そして「RUR」はぜひとも上演してみたい作品でもあります。「あのロボット演劇をぜひ松本でもやりたいね。近隣の街も含めて精密業が盛んな街だしね」とディレクターと話しています。

 また諏訪二葉高校の演劇部さんが、前述の「白い病気」を見てくださったがきっかけで「RUR」を上演するそうです。


 一つのきっかけを通して、いろんな連鎖が生まれることはとっても素敵なことだと思うんですよね。(いまい)