更新日 2007/05/21

美術館でお昼寝を−安曇野ちひろ美術館のおいしい時間−

美術館って、どんなとこ?

chihiro_01.jpgみなさんは、年に何回くらい、美術館を訪れますか?
「だいたい月に1回、年に10回は行くわね。」という方は、そんなに多くないのでは?
「正直、奥さんに連れられて、年に1回、行くか行かないか…」という方、普通かもしれません。

美術館は、どうしたって「敷居が高い」と思われています。
美術についての知識がなければ面白くない、絵の見方なんて分からない、なんだか行くだけで緊張する、などなど。

私の職場である安曇野ちひろ美術館では、できるだけこの「敷居」をとっぱらおうと、いろいろと試行錯誤をしています。私のボスである松本猛(安曇野ちひろ美術館館長・長野県信濃美術館館長)の著書『ぼくが安曇野ちひろ美術館をつくったわけ』の章立てを見るだけでも、その考えの一端が見えてきます。
「絵は見なくてもいい」「昼寝のできる美術館」「おいしかったと思える美術館」etc…

敷居をとっぱらう企画のひとつに、美術館と松川村社会福祉協議会の共催で行う「安曇野寄席」があります。
この「安曇野寄席」は、村民や近隣市町村の方々を対象に行っていますが、松川村内の一人暮らしのお年寄りやデイサービス利用者は、社協の福祉バスが送迎してくれます。村のお年寄りが、美術館を訪れる機会として定着してきました。
「美術館で寄席をやるのだ!」とボスが言ったとき、正直、私は「え?寄席?美術館で?」と思ったのも事実です。しかし、昨年秋、5回目の「安曇野寄席」の終演後、「来年も生きてたら、ぜったい見に来るでね。来年もまた来てくれや!」と、噺家の手を握って離さない常連のおばあちゃんの様子を見て、確信しました。
美術館は、こういう場でいいんだ。こうあるべきなのかも。と。

近所に住んでいても、美術館に来たことがない、なかなか来られない、というお年寄りが、美術館で落語を聞いて、笑って、楽しんで、家に帰る。
美術館に居たそのひととき、心が満ちる。
人生の、ほんの一瞬かもしれないけれど、豊かな時間をすごす。
それが大切なのかもしれません。

美術館は、生活必需品じゃないけど、人生必需品。
そう思ってもらえるように、今日もまた、お昼寝用の寝椅子に枕を並べながら、美術館でお客様をお迎えします。

写真:安曇野寄席にて 2004年

プロフィール
松澤理佳(まつざわ・りか)
長野県生まれ。小学校1年生より松本で育つ。信州大学経済学部卒業後、一般企業に勤めたあと、1997年3月より安曇野ちひろ美術館に勤務。趣味は旅に出ること、特技はおいしい物、おいしいお酒にありつくこと。

バックナンバー
  1. 美術館って、どんなとこ?2007/05/21
  2. 27歳の頃―ちひろと松本2007/05/28
  3. おいしい美術館2007/06/04
  4. 美術館で芝居をやるぞ!
    -松川村版『グリム・グリム・グリム』ができるまで
    2007/06/11

連載記事一覧

最終更新日 2007/11/10
最終更新日 2007/11/14
最終更新日 2007/11/15
最終更新日 2007/11/12

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