ヴィーンを歩く
しかしなによりも私にとって深刻だったのは当日の夕方、ムジークフェライン(楽友協会)でのポリーニのピアノリサイタルがあるのだ。普段なら安いチケットしか買わないのに、だ~い好きなポリーニ様、奮発して高~い席を購入していた。ホールはもちろん公演は予定通り行うと言う。当時私が住んでいたのは、ちょっと郊外のヴィーンの森近くのフラット。会場までの足が問題なのだ。ヴィーンっ子にとっても未経験の事態であり、公共交通機関はストップしても、まあタクシーは動くだろうと友人はいう。ところが当日、タクシーを呼ぼうと電話をしてもどこの会社にもつながらない。外へ出てみると、車の大渋滞、まったく動いていない。
「こうなりゃ歩いていくきゃない!」普段は路面電車に乗っているが、それこそ歩けないことはないヴィーンなのだ、と覚悟を決めた。ハイヒールからドタ靴に履き替えて、腕時計を気にしながら、私としてはトップギアーで歩きに歩いた。会場までの四分の三くらいは歩いたろうか、開演時間と勝負に少々悲観的になりかかった時に、幸運の女神、空タクシーがキーっと止まってくれた。
さてコンサート会場、私がこんなに苦労したのだから、辿り着けない人も多いのだろうな、と予想していたのに、空席なし。さすがポリーニ。特にその晩のショパンの「子守歌」は感動的で私の歩き疲れた足をも癒してくれた。ウォーキング・ディスタンスの大都会ヴィーンは大好きだ。
写真1:ムジークフェライン正面
写真2:シュターツオパー正面
写真3:ヴィーン市内(シュターツオパーからケルントナー通りをのぞむ)


