更新日 2007/07/04

人生を演じきる

土佐てんと親孝行

先日母から「松本難民へ」と僕らの住む家に高知産の干物と土佐てん(さつま揚げのようなモノを想像してください)が送られてきました。この間の『田舎奇談』の公演にも来ていて『アルルの女』に続き2度目の松本をすっかり満喫していました。

息子から見ても母は謎だらけで、昔のことを全く語りません。自分がどの大学で何を専攻していたかも全く教えませんし(最近ブレヒトを専攻していたらしいということまでは掴みました)、東京に住んでいたらしいのですがどこに住んでいたのかもはっきりしません。女同士ではないからなのか僕は母が母になる前にどんな人だったか全く知らないのです。

そんな親子関係ですが、ここ何年か役者を志す僕が母親に親孝行する方法は何だろうと考えています。いくら考えようが結局ブランド物の洋服を買うとか、新築の家を建ててやる財力はあるはずもなく、思いついた方法が「母親をどんな場所にも引っ張り出す。」という迷惑極まりないものでした。

大学の友人や先生を囲んでの飲み会、友人の結婚式、東京の最近良く行くレストランに連れて行く…。とにかく東京で一緒にいる時には必ず連れまわす。それが僕の考えた親孝行でした。実際母が喜んでいるのか(上記は全て割り勘ですし…)、僕にはわかりません。いつか訪れる最後の時に母が「こんなに連れまわされた母親は他に居ないでしょうね!」と思ってくれることを目指しています。

こんなことを書くと自分でもとても親孝行息子のように思えますが、最近携帯電話を持った母から来る絵文字メールや、昨年家族で箱根に旅行した際の記念撮影で腕を組まれたときの僕の苦虫を噛み潰したような顔は是非お見せしたいくらいです。

そういえば以前六本木ヒルズでジャズの生演奏つきのバーに行ったときのこと、「私も若いときはこういうところに来て、男の人におごってもらってたのよ。」とバーボンのロックを片手に笑っていました。謎は深まるばかりです。

プロフィール
細川貴司(ほそかわ・たかし)
1981年高知県生まれ。日本大学芸術学部演劇学科(演技コース)卒業。大学入学時に観たワークショップ公演『にぎやかなゆりかご』(串田和美演出)に感銘を受け、在学中より串田和美に師事。大学卒業後、『コーカサスの白墨の輪』『アルルの女』に出演。2007年4月から松本に移住し、まつもと市民芸術館トライアウト公演『田舎奇談』に出演。次回作は7月の同館トライアウト公演『罪と罰』。

バックナンバー
  1. 初湯千両と猿田彦神社2007/06/13
  2. 名刺と俳優2007/06/20
  3. コーヒーミルと親友の娘2007/06/27
  4. 土佐てんと親孝行2007/07/04

連載記事一覧

最終更新日 2007/11/10
最終更新日 2007/11/14
最終更新日 2007/11/15
最終更新日 2007/11/12

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