更新日 2007/07/18

ぼくのそばにあるもの

沼エビに教えられたこと


『罪と罰』に参加させていただくにあたり、「私にとって罪とは何だろう」と考えた時期があり、一つ思い浮かぶことがありました。

小学生の頃、小魚と沼エビを飼っていました。

エビは水槽の苔を食べてくれるらしく、掃除が楽になると友達から聞いたので、すぐに飼いました。しかし、どうしたわけか、小魚が次々と死んでしまいました。残ったのはエビ。仲間がいなくなったエビは、水槽の中でひとりぼっち。とても寂しそうでした。

その頃、別の友達が魚を飼わなくなったので、水草やエサをくれると言ってくれました。もらった水草は本物ではなく、水槽の中をきれいにみせるための合成樹脂でできていました。色は緑ではなく、赤と黄色が混ざったもの、青色のラメが入ったものなど、とてもきらびやかでした。エサにしても、私があげていたものよりも高級なエサでした。

早速、水槽にセットしてみました。「ボク、明らかに場違いだよ」とエビが言っているのがわかりました。ハイカラな水草と沼エビはそれくらいミスマッチでした。しかし、水槽が賑やかになったのは事実で、哀愁めいたものが消えたので、そのままにしていました。本来、沼に暮らす彼にとって、ひどい事をしたなと思うようになるのは、もう少し大きくなってからでした。

そんな異国気分を味わっているエビも、ついに死んでしまいました。魚のときと同様に、花壇の隅に埋めようとしたとき、死んだことを知らない父がやってきて、「お?それかき揚げに入れて食べるのか」と言いました。エビは死ぬと赤色になり、一見、桜エビに見えるのです。

そのとき私は、幼ながらに、人は食べていかなきゃ生きられないんだ。その命に愛着が湧いたばかりに、こんな複雑な気持ちになるなんて、人間はなんて罪深いんだろうと思ったのです。小学生の私にとって、結構ディープな出来事です。これが沼エビに教えられた「罪」です。では。

プロフィール
内藤栄一(ないとう・えいいち)
1983年生まれ。23歳。松本市に生まれ育つ。まつもと市民芸術館『水の話』に参加、演劇の世界に魅了される。以降、ワークショップ「シアターキャンプ」や『田舎奇談』などに参加。松本にいながらにして本物の刺激を味わえている、幸せ者な夢見る若そば打ち職人。

バックナンバー
  1. あの頃の上司に感謝2007/07/11
  2. 沼エビに教えられたこと2007/07/18
  3. 涙のブロッコリー2007/07/25
  4. 私のお父さん2007/08/01

連載記事一覧

最終更新日 2007/11/10
最終更新日 2007/11/14
最終更新日 2007/11/15
最終更新日 2007/11/12

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