更新日 2007/11/15

建築屋さんのひとり言

やってみるか!

はじめまして。この度、シアターパークに投稿させていただく事になりました。有限会社杢好舎の河住です。これからしばらくの間、どうぞ宜しくお願い致します。

ある日、長野へ来て以来お世話になっている方から「一緒に市民芸術館へ行ってほしい」というお誘いがありました。仔細の分からぬまま、芸術館に初めて足を踏み入れました。主ホールの裏側では黒づくめの人達が忙しそうに作業をしていて、まずホールの大きさと天井の高さに驚きました。

本業が建築屋の自分には何かすごく場違いな所に連れてこられたような気がしていると、舞台のチラシ、数枚のスケッチ、図面らしきものを手渡され、話を始める市民芸術館制作担当Ma氏。全身、黒づくめの姿に腰袋とセッタ履き、舞台大道具スタッフのMu氏。

アルルの女?プロバンス地方?串田和美監督?まじめな顔をしながらも、内心何を言っているのか意味が分からず、ニッコリ相づちを打ちながら打合せが終了。互いにミョーに作り笑顔で“宜しくお願いします”と元気良く別れた。これが芸術館で仕事をさせていただく事になった最初の日の出来事です。

その後、仕事仲間の職人達と“アルルの女”っていう組曲があるらしいとか?“プロバンス”って南仏の田舎らしいとか?…少しずつ話が見えてくる。

数日後、Mu氏から電話で「稽古が始まるので見に来てほしい」とのこと。夕方、芸術館へ行くと数人の役者達が稽古をしている。稽古を見た後、コーヒーを飲んだり煙草を吸いながら和やかな雰囲気で大道具スタッフと軽く打合せ、という運びに…。

しかしこの頃から、だんだん不安になる。どうも“自分がやる”前提で話が進んでいる。Mu氏が写真をみせながら

「お願いがあるんですが…」
「はい」
「暖炉って造ってもらえますか?」
「はいっ?」

[解説]ここで言う“暖炉”とは、芝居の途中(転換という)にスタッフ2人程度で移動でき、もちろん火は使わない。あくまでも芝居の中での小道具。一方、建築で“暖炉”と言えばレンガで造る固定物で、とても2人で移動できる物ではありません。

…ありえない注文です。

業者に頼むわけにもいかず、自分でつくるしかない。南仏の田舎の写真を見てイメージを膨らませ、現場にあるスタイロフォームを切り、コーキングで貼り合わせ軽量モルタルを塗りつけて仕上げてみた。

東京から舞台の演出家が来て、試作品を見てくれるとのこと。試作を軽トラックに乗せて駄目もとで芸術館へ。おそるおそる。

結果、とても気に入っていただき、舞台の大道具の仕事、「よし、いける」とは思わないものの、「いけるのかな」くらいの手ごたえを感じ、今回の舞台セット造りを“やってみるか”という気になりました。

でも、“ありえない注文”はこの後どんどん続くことになるのです。

写真:『アルルの女』の劇中に登場した“暖炉”

プロフィール
河住哲也(かわすみ・てつや)
埼玉県出身。専門学校卒業後、1993年から長野県に移り住む。建設会社に10年勤め、2003年杢好舎を開業。建築全般、庭工事を主に、インテリア、家具、雑貨等も扱う。

・杢好舎: http://www.mokkousya.jp/

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  1. やってみるか!2007/11/15

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最終更新日 2007/11/10
最終更新日 2007/11/25
最終更新日 2007/11/15
最終更新日 2007/11/26

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