更新日 2007/12/29

建築屋さんのひとり言

ご縁があったら

先日、こんな事がありました。

古い民家の工事をさせていただいていると、お茶の時に座敷の壁を塗り直してほしいと施主様から言われました。

「前の工事の人、床の間の下がり壁の裏側を塗り忘れていったみたいで、昔から土壁ままなんですよ。そこも塗って下さい」と。

古い民家には、こういう所が良くあります。

これは決して忘れたわけでも、ましてや手抜きをしたわけでもないんです。

建物を造ることは施主様にとって、一生に1~2回位でしょうか?その工事を依頼されるなんて、工事者からしてみれば偶然みたいなものです。些細な事から生まれた縁も、その方の一生に一度の機会の手伝いができるのですから有難いことです。

その大切な縁を終わらせないために、生活にはほとんど支障の無い箇所をちょっぴり残しておく。わざと仕事を終わらせないんですね。

そうして、「何かあったらいつでも呼んで下さい。縁(仕事)は終わっていませんので」という意味を込めて。

最近は「残工事だ」とか「手抜き工事」なんて言われかねませんが昔は、こんな風に人と人とが繋がっていたんですね。

結局、その壁は塗らないまま工事は終了しました。

自分自身も長野へ来たことや、建築に携わっていることは些細な縁があったからです。芸術館の方々と一緒に舞台をつくり四苦八苦しながら楽しみながら、未知の世界を垣間見られる事はありがたいと思います。

15年も経って、すっかり信州弁の松本人になりました。

日々、仕事の毎日ですが、たまには芸術館で舞台やオペラの鑑賞をしながら、これからも、多くの人との縁を大事にしていこうと思います。

初回から今回までお付き合いくださいましてありがとうございました。

プロフィール
河住哲也(かわすみ・てつや)
埼玉県出身。専門学校卒業後、1993年から長野県に移り住む。建設会社に10年勤め、2003年杢好舎を開業。建築全般、庭工事を主に、インテリア、家具、雑貨等も扱う。

・杢好舎: http://www.mokkousya.jp/

バックナンバー
  1. やってみるか!2007/11/15
  2. ありえない注文2007/11/29
  3. いざ、舞台制作本番2007/12/17
  4. ご縁があったら2007/12/29

連載記事一覧

最終更新日 2007/11/10
最終更新日 2007/12/15
最終更新日 2007/12/29
最終更新日 2007/11/26

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