倉田翠メッセージ

踊り出すどころか、まずただそこに立つことが難しかった。
私がなんとか確信を持てたのは、私ではない人たちでした。それにどう対することができるか。対峙していると、得体の知れない他者から、それは私だと思える瞬間が見えてくる。
同じ経験などしていないのに、その感じを私は確かに知っている気がする。共感など絶対できない他者をわかりたいと思うこと。勝手に想像すること。
ここならその境界線を曖昧にできるんじゃないかと思っているんだと思う。
意味とかじゃない、私もここに立って、あなたと共に生きていて良いと思える全く根拠のない確信みたいなものです。

ソロダンスの場合、お客様が唯一その他者になりますね。
私にとってソロダンスとは、テーマがあって、それをやっていることを見てもらうというより、ただ私があなたの前に立っていること、そこで踊り出すとは何か、ということを、ここまで生きてきたことを正直に背負ったまま見ている人との間で成立させていくということです。ソロダンスをすることに少し恐れがあるのは、自分が覗かれてしまうような、逆にお客様を覗きに行くような対峙がそこに生まれるからかもしれません。
だから、「まつもと」とタイトルに付けたのは、ここでやることの覚悟みたいなものがあります。

こんにちは、寒いですか？私は今めちゃくちゃ汗をかいていると思うんですけど、でも全然寒いです。

倉田翠