芸術監督団

芸術監督[舞踊部門] 倉田翠

芸術監督に就任し、1年が経ちました。「監督」という肩書き、仕事にも少しは慣れてきたかと思います。

就任会見の際に、私はあまり大きな物事を動かすことはできないんですよ、ただ、小さなことをちょっと動かすということはできるかもしれない、と言ったかと思います。
今、まさにその通り、松本の街で出会った人、劇場で出会った人、見た舞台、行った場所、外から来てもらった人、点だったものが線になって繋がってきている感覚があります。

一つ、嬉しかった話を。 地元の方が主催する「おどりば」という公演(一般の方に向けた、ソロダンスを作るという企画)を拝見しに行った際、参加者の方が「倉田さんの企画『身体と音楽』を見に行き、小暮香帆さんのダンスを見て、自分も踊りたいと思いこの企画に参加しました。」と伝えてくださいました。
松本に呼んだ一人のダンサーの踊りが、ここに住む誰かの「踊ってみよう」に繋がったんだと思うと、胸が熱くなります。そして、その想いを受け止める場がある。ぐぐぐってなる。

と、こんな風に話し出したらきりがないんですが、このようなささやかな小さな繋がりを、私は希望に感じます。

コンテンポラリーダンスが地方都市で急に盛り上がる、ということは、私はないと思っているのです。 でも、こうして小さな点が街の方々の力を借り、少しずつ広がっていく気配を感じています。
今年度も引き続き、たくさん街に出て、人と出会い、様々な方が劇場に足を運んでくださいますよう頑張ります。よろしくお願いいたします。

プロフィール

写真:芸術監督[舞踊部門] 倉田翠

演出家、振付家、ダンサー、akakilike主宰。1987年、三重県生まれ。
3歳よりクラシックバレエ、モダンバレエを始める。京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)映像・舞台芸術学科を卒業後、京都を拠点に、演出家・振付家・ダンサーとして活動。作品ごとに自身や他者と向かい合い、そこに生じる事象を舞台構造を使ってフィクションとして立ち上がらせることで「ダンス」の可能性を探求している。2016年より、倉田翠とテクニカルスタッフのみの団体、akakilike(アカキライク)の主宰を務め、アクターとスタッフが対等な立ち位置で作品に関わる事を目指し活動。演出する作品の出演者はプロのダンサーや俳優だけでなく、一般市民、依存疾患者、オフィスワーカーなど、様々な立場の人が登場するなど、他に類のない舞台芸術作品を生み出している。