まつもと市民芸術館広報誌「幕があがる。」リニューアルのお知らせ

創刊以来、48号に渡って発行を続けてまいりました広報誌「幕があがる。」ですが、先日発行をいたしました49号より「BATON」と改名し、リニューアルをいたしました。年間の発行回数はこれまでの4回(季刊)から3回に変更。また、1号あたりのページを増量し、より充実した内容をお届けいたします。
49号の「BATON」の巻頭随想録では、リニューアルに際して串田和美芸術監督の思いも綴られておりますので、是非、冊子を手にとってお読みいただければと思います。

また、「幕があがる。」20号~48号まで長らく連載を続けていただき、多くの方にご愛読をいただいておりました、ウチダゴウさんの「声のするほう」と、小島あや乃さんの「幕間の一冊」も48号で終了させていただくこととなりました。

お二人からのコメントをいただいておりますので、本来であれば、48号の中でお二人からのコメントをいただくところではございますが、リニューアルのお知らせとあわせて皆さまにご紹介をさせていただきます。

松本に移り住んで、初めに美しいと思ったのは、女鳥羽川に佇む、一羽の鷺でした。細い足で微動だにせず立ち、じっと川面を見つめる姿は、冴えて清々しく、こちらの背筋まで伸びる気がしました。仕事を辞め、東京を離れ、縁も所縁もない土地で、結婚し、事務所を開く。新たな街で、すべてを一からスタートした自分への、叱咤激励のように思えたのです。2011年春号に掲載した連載の一編目「白鷺」は、あの鷺への返礼として、また、同時期に東北で起こった大災害を目の前に立ち竦むこの国の人々へのエールとして、認めました。
松本に移り住んでいなければ——。『幕があがる』での連載がなかったら——。おそらく、ぼくの今はありません。街の人が、詩人という存在を受け入れてくれたこと。今まではさほどあるいはまったく嗜むことのなかった詩を、怖がらずに、ただそのまま、楽しんでくれたこと。だからぼくは詩を書き続けることができ、また、自分の詩的感性に向き合うことができたのだと思っています。この春、拠点を安曇野穂高有明に移しましたが、自分の仕事を通じて、これからも、松本に寄与できたらと願います。
最後に。無名の詩人に連載の機会を下さったまつもと市民芸術館の皆様、歴代の編集担当の方々、そしてこれまで連載を愛読し続けてくださった皆様、ありがとうございました。お気づきの方もいるかもしれませんが、7年間計28編の詩の中には、常に、松本で暮らす人びとやその風景、その出来事を書いてきました。もしも知らずに読んでいた方がいたら、ぜひ遡って読んでみてください。あなたがそこにいるかもしれません。ぼくの詩に登場してくれたすべての人とその人生に、今後も、良き風が吹きますように。心より、祈ります。
2018.6.11
ウチダゴウ
https://shitekinashigoto.com

幕間の一冊、あとがき
「大切な一冊を教えてください。本のジャンルは問いません。現在、入手可能かどうかも問いません。その本があなたの人生に与えた影響を教えてください」。これが取材のお願いでした。たくさんの本、たくさんの思いに触れ、豊かな経験を分けていただいたこと、幕間どころか本編だという充実した取材でした。
人生の主人公は自分だ、などと言われます。本を開いて別の世界に没頭することは、人生の舞台裏で息をつく、幕間の時間なのかもしれません。つかの間の休息は、次への準備でもあり、ベルが鳴ればまた幕があがります。
舞台とは切り離せない幕間に得たもの。大切な一冊は何ですか。またいつか、あなたの人生の舞台と幕間のこと、ぜひ聞かせてください。
小島あや乃

「幕があがる。」第20号の発行が2011年の5月でした。それから約7年もの間、「幕があがる。」を支えてくださったお二人に改めて御礼を申し上げます。